心房細動について
心臓の線維化とそれによる心肥大・拡大がすすむと心房細動になりやすくなります。
加齢に伴う線維化は避けることができず、75歳を過ぎると5人に1人は心房細動になると言われております。
脈を取ってみて、脈がデタラメ(無秩序)出ているようだと心房細動が疑われます。
心房細動の人すべてが頻脈をおこしたり、動悸を訴えているわけではありません。
発作的に心房細動になった場合においても、24~48時間で洞調律(心臓本来の調律)に復帰することがほとんどであるようです。
心房細動の治療について
・ 脈拍数のコントロールが治療の基本です。
・ 心房細動の原因となる疾患(高血圧症・虚血性心疾患・生活習慣病・甲状腺機能亢進症・感染症・慢性閉塞性肺疾患 (COPD) ・睡眠時無呼吸症候群 など)に対する治療、また、原因となる薬剤(利尿剤・テオフィリン・β刺激薬 など)に対する対応が極めて重要です。
★ 心臓のための治療よりも脳梗塞予防の方が重要とされています。
心房の『ふるえ』により左心耳内に淀みが生じ、血の塊(血栓)がつくられます。
それが脳梗塞や他の臓器の塞栓や虚血をおこすことが懸念されます。
ハイリスク症例では年間5%くらいのケースで脳梗塞が生じるとされていますが、抗凝固療法を行うことによって、発症を70%近く抑えられることが報告されています。
心原性脳梗塞の予防のためのリスク層別化には、CHADsスコアが用いられます。
各アルファベットは、それそれの背景因子の頭文字をとったものです。
C:心不全 H:高血圧 A:75歳以上 D:糖尿病 S:脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA) の既往
C、H、A、Dはそれぞれ1点 Sは2点 全てを加算して合計点を求めます
一般的に2点以上で脳梗塞予防が必須であり、1点であっても可能であれば予防のための医療行為を行うことがガイドラインで推奨されています。
脳梗塞を予防するには抗血小板療法は無効です。
現状では、ワルファリンカリウムの他、新規経口抗凝固薬 (NOAC) と呼ばれる抗トロンビン薬、抗X a薬(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ダビガトランエテキシラート など)が開発され、普及しております。
新規抗凝固薬は、ワルファリンに比べ、服用開始後に迅速な抗凝固作用が得られること、用量の調整が不要でモニターが原則不要であること、頭蓋内出血の副作用が少ない などの特徴があります。ただし、服用を中止するとすぐに抗凝固作用が無くなること、出血の際に抗凝固作用を戻す治療法がないことに注意が必要とされています。