高尿酸血症
まずはじめに (総論)
プリン体とはプリン環をもつ物質の総称であり、生物が存在するために必要なエネルギー(ATP, GTP など)や、核酸(DNA, RNA) の原料となるものである。
プリン体の最終代謝産物が尿酸であり、プリン体は尿酸の形で体外に排泄される。
体内には約1.200mgの尿酸がプールを形成している(尿酸プール)。
肝臓での生合成や食事からの摂取によって1日に約700mgの尿酸が産生され、同量が尿中へ排泄されて尿酸プールは一定に保たれる。
産生と排泄のバランスがくずれ、尿酸プールがあふれると高尿酸血症となる。
血液(腎機能検査)・尿検査などの結果をもとに、以下の病型分類がなされる。
① 尿酸の産生が過剰である場合 (産生過剰型)
② 尿酸の排泄率が低下している場合 (排泄低下型)
疫学 定義 概念など
日本の成人男性における高尿酸血症の頻度は、30歳以降では30%に達していると推定され、増加傾向があると考えられている。
血清尿酸値が 7.0mg/dl を超えるものが高尿酸血症の定義であり、尿酸塩沈着症(痛風関節炎※1、腎障害など)の病因となり得ることが懸念される。
尿酸値は、近年、生活習慣病のマーカー(※2)や、高血圧症などの疾患の発症予測因子として、また、腎不全の危険因子として重要視されている。
治療
1)食事療法
プリン体の1日摂取量は 400mgを超えないようにとの記載を目にするが、厳密なコントロールや極端な制限は現実的に困難。 カロリーの摂りすぎとプリン体の多い食品を減らすことが必要である。
(参考) 高プリン食 動物の内臓(豚レバー、牛レバー、ホルモン)
魚(サンマ、アジ)の干物 エビ カツオ
アルコール制限
日本酒は1合 ビールなら 500ml ウイスキーであれば 60ml
にとどめる。 禁酒日は週に2日以上もうける
尿酸を下げる食事
乳製品(低脂肪ヨーグルト) コーヒー ビタミンC
2)運動療法
BM I <25 を目標に 週3回程度 軽い運動(有酸素運動)を行う
3)内服治療 痛風発作時とは治療方法が異なることに留意
尿酸結晶を融解させるためには、血清尿酸値を 6.0mg/dl 以下にする必要あり。
この数値以下で安定する量の尿酸硬化薬の服用を続ける。
尿酸産生過剰型には、尿酸生成抑制薬を用いる。その際、腎機能障害に留意する必要あり。
尿酸排泄低下型には、排泄促進薬が選択される。尿をアルカリ化する薬を併用することが原則である。
4)痛風発作時の治療 非発作時とは治療法が異なる!
痛風発作とは、第1中足趾関節(MTP)に好発する急性関節炎である。
ストレス・飲酒・運動など、何らかの誘引があることが多い。
血清尿酸値を変動させると発作の増悪を招きやすい。そのため、発作中に尿酸硬化薬の服用を開始したり、中止したりしない。
なお、痛風関節炎発作中の血清尿酸値は必ずしも高値を示さないことが知られている。したがって、発作中に施行された尿酸値測定の診断的価値は高くないわけだが、あまり認知されていないようである
非ステロイド抗炎症薬(Nsaids) を短期内に大量投与する。
NSAIDs を使用できない、あるいは無効である場合は、ステロイドの経口投与を行う。
発作前兆期に、予防薬としてコルヒチンを用いる方法も紹介されている。
※1 痛風関節炎について
高尿酸血症が持続した結果、関節内に析出した尿酸塩結晶が起こす結晶誘発性関節炎である。局所に発赤・腫脹を認める。
【痛風関節炎の診断基準】 以下の1.~⒊のいずれかを満たせば診断可能
1.尿酸塩結晶が関節液中に存在すること
2.痛風結節の証明
3.以下の項目のうち6項目以上を満たすこと
( a ) 2回以上の急性関節炎の既往がある
( b ) 24時間以内に炎症がピークに達する
( c ) 単関節炎である
( d ) 関節の発赤がある
( e ) 第1中足趾関節の疼痛または腫脹がある
( f ) 片側の第1中足趾関節の病変である
( g ) 片側の足関節の病変である
( h ) 痛風結節(確診または疑診)がある
( i ) 血清尿酸値の上昇がある
( j ) X線上の非対称性腫脹がある
( k ) 発作の完全な寛解がある
※2 内臓脂肪の蓄積によって血清尿酸値は上昇しやすくなることが報告されている。
血清尿酸値の上昇とメタボリックシンドロームの頻度は相関しているとのことである。