貧血について
貧血について
【定義 (WHO ガイドライン)】
Hb ( ヘモグロビン 赤血球中の酸素を運ぶタンパク質) が
15歳以上では 男性 13.0 g/dl 以下
女性(非妊婦) 12.0 以下
女性(妊婦) 11.0 以下
※ 基準値以下だからといって,必ず精査・治療が必要となるわけではありません
【疫学】
WHOの貧血の定義を満たす者
男性 11.1% (ほとんどが60歳以上)
女性 16.2% (30~40歳代と 70歳以上に多い)
【貧血を疑う症状】
頭痛・めまい・失神・耳鳴・倦怠感・動悸・息切れ・立ちくらみ
身体所見: 眼瞼結膜蒼白,頻脈,起立性低血圧,浮腫,心雑音・血管雑音 など
鉄欠乏性貧血では 嚥下困難,匙(スプーン)状爪,舌炎,異食症(氷,土などを食べたがる)などの症状が特異的でありますが 必発ではありません.
※ 氷をガリガリと食べることが好きな人は確かに多いなと感じております.
【初診時に必要な検査】
血液検査: 血算,末梢血液像,網状赤血球(レチクロ),血清鉄,血清フェリチン,総鉄結合能 など
● 鉄欠乏性貧血か それ以外の貧血(溶血性貧血,骨髄不全,サラセミア 等)かを鑑別することが重要です
総合診療を行う一般的なクリニックでは めったに遭遇することのない 特殊な貧血は,血液内科専門医に紹介して診ていただくのが最良と認識しております.
以下,最も一般的な 鉄欠乏性貧血について取り上げます.
【鉄欠乏性貧血の確定診断】
・ ヘモグロビン濃度が 12.0 g/dl 未満
・ 総鉄結合能が 360 μg/dl 以上
・ 血清フェリチン値が 12.0 ng/dl 未満 を満たす場合
【鉄欠乏性貧血の成因】
月経のある女性では過多月経,子宮筋腫が多いが、原因不明のこともあります.
婦人科系の悪性腫瘍である可能性も考慮し,婦人科を受診することが必要です.
男性および閉経後の女性では,成因のほとんどは消化管出血と言われています.
当クリニックでは,食道・胃・十二指腸を見る上部消化管内視鏡検査と,大腸内視鏡検査をお勧めし,実施しております.
【鉄欠乏性貧血の治療】
鉄剤による鉄の補充,経口投与が基本です.副作用として,悪心・嘔吐・便秘・腹痛・下痢などの消化管症状をきたすことがあります.
便は黒くなります(必至).
消化管の副作用を避けるために制酸薬(胃薬)を内服したり,食事と一緒に鉄剤を内服すると鉄の吸収率は低下します.
オレンジジュースやビタミンCなどと一緒に 空腹時に服用すると鉄イオンが保たれて吸収率が高まるとされています.
緑茶やコーヒーとの同時摂取は避けるよう言われています.
【鉄欠乏性貧血の管理】
経口投与開始後,6~8週間で貧血は改善します.
体内の貯蔵鉄が正常化するまでは,3~6ヶ月程度かかり,その間は鉄剤服用を継続する必要があります.
また,内服終了後も再度増悪がないか,定期的に経過をみる必要があります.
● 補足 【貧血のない鉄欠乏】
女性で疲労感がある場合,血清フェリチンを測定することが推奨されています.
15 ng/ml 以下であれば,鉄欠乏に特異的であると言われています.
食事療法(鉄剤服用の適応ではないようです):
吸収の良いヘム鉄(2価鉄)は,肉(牛・豚・鶏),レバー,赤身の魚に多く含まれています.(脂質も多いため,摂り過ぎに注意)
非ヘム鉄(3価鉄)は,海藻類,野菜(ほうれん草,パセリ,ニラ 等),切り干し大根,そら豆,ピーナッツ、ゴマ,果物(アプリコット,プラム,レーズンなど)に多いそうです.