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睡眠時無呼吸症候群 (SAS)

 睡眠時無呼吸症候群 SAS ( sleep apnea syndrome ) とは

SASは 睡眠時に無呼吸または低呼吸の状態が頻回に出現する状態です.

頻回の無呼吸の度に覚醒が生じるため,睡眠が障害され 日中(活動中)の傾眠を引き起こします.

 近年,SASと心血管疾患が相互に発症し,進行に関わりあうことが明らかにされました.

 SASは,閉塞性SASのOSAS ( obstructive sleep apnea syndrome )と,中枢性SASのCSAS ( central sleep apnea syndrome )に大別されます.

 我が国において睡眠呼吸障害の有病率は20%前後と報告されています.治療を要するOSASの85%は未診断とされており,特に合併症を有する症例では積極的介入が望まれています.

 CSASは 脳血管障害(脳梗塞,脳出血),心不全などが原因となり,呼吸中枢からの出力が停止することにより呼吸運動が消失する病態です.CSASは臨床上,遭遇する機会はあまりないとされているため,本稿ではOSASを取り上げます.

閉塞性睡眠時無呼吸症候群 ( OSAS ) について

 発生機序

 睡眠によって筋肉が弛緩し,舌根および軟口蓋の後端,喉頭蓋が沈下します.立位に比べて気道は狭くなりますが,正常では呼吸に大きな影響は及ぼしません.

 OSASでは,肥満(上気道周囲への脂肪の沈着)などによって上気道が狭くなっています.睡眠によって筋肉が弛緩することにより,さらに上気道が狭くなります.この狭窄により空気が振動し,いびき音が発生します.

 上気道が完全に閉塞すると気流が停止し,無呼吸となります.

 呼吸中枢は正常であるため,換気努力による呼吸運動(胸郭と腹部の動き)は観察されます.

 原因(上気道の狭窄・閉塞をきたす主な要因)

・肥満(上気道周囲への脂肪沈着)

・解剖学的構造(長顔・小顎症・顎が後退している 等)

 この原因によるOSASは日本人に多いとされています.日本人のOSAS患者の40%は非肥満者であるそうです.

・扁桃肥大(小児に多い)

・巨舌(甲状腺機能低下症などの内分泌代謝疾患による)

 症状

・日中の過度の眠気 

 エプワース眠気尺度 ESS ( Epworth sleepiness score ) ※ 後述

  11点以上が異常 16点以上が重症

・睡眠中の窒息感や あえぎ

・繰り返す覚醒

・起床時の爽快感の欠如

・日中の疲労感

・集中力の欠如

以上のうち 2つ以上を認めた場合,睡眠呼吸障害随伴症状と考えます.

合併症

 高血圧症や糖尿病,肥満などの いわゆる生活習慣病の合併が多く,心血管疾患発症リスクが高いことが明らかになっています.

 治療抵抗性高血圧症,早朝高血圧症,慢性心不全,心房細動,脳血管障害,腎不全 等に罹患している方は,SASを疑い検査を受けることが勧められています.

検査

・エプワース眠気尺度 ESS ※ 合計点が11点以上を異常 16点以上を重症と判定

 以下の状況で うとうとしてしまったり,眠ってしまうことがありますか?

 (0: 絶対にない 1: 時々ある 2: よくある 3: 大体いつもある)

1.座って読書中

2.テレビを見ている時

3.人が大勢いる場所(会議や映画館など)で座っている時

4.他の人が運転する車に,1時間ぐらい休憩無しでずっと乗っている時

5.午後 横になって じっと休んでいる時

6.座って人とおしゃべりをしている時

7.昼食後,静かに座っている時

8.自分で車の運転をしていて,信号待ちをしている時

 

・ポリソムノグラフィ PSG ( polysomnography )

  閉塞性無呼吸の出現を確認します.

 観察するものは,鼻と口の気流,胸腹部の換気運動(呼吸努力),酸素飽和度(SpO2),心電図,脳波,眼電図,頤(オトガイ)筋の筋電図 などです.

 このうち,脳波,筋電図を省略したものや,気流またはSpO2のみを測定するもの(簡易モニター)があり,在宅での検査に用いられています.

 SASが疑われる場合,ESSによる眠気の評価とともに,簡易モニター検査を行うことが一般的です.これにより重症と判定された場合は治療適用となり,それ以外ではSASが否定されない限りは,PSGを施行することになります.

診断基準

 症状の有無や,PSGによる閉塞性無呼吸の出現および無呼吸低呼吸指数(AHI)により診断します.

 無呼吸低呼吸指数 AHI ( apnea hyponea index ) とは,睡眠中の1時間あたりに出現する無呼吸と低呼吸の和 (単位: 回 / 時間)のことです.

 AHI ≧ 5 で 日中の傾眠などの症状を伴う場合  あるいは

 AHI ≧ 15 (症状は問わない) である場合 OSASと診断されます.

 重症度は,AHIが 5以上 15未満で軽度,15以上 30未満で中等度,30以上で高度 と判定します.

生活指導 (日常生活における改善点)

・肥満の改善

・抱き枕を利用した側臥位睡眠

・就寝前の飲酒の禁止

・睡眠薬服用の制限・禁止

・鼻閉に対する治療の勧告

治療

 OSASの治療は,高血圧の是正や心血管リスク(心不全,虚血性心疾患など)の減少にもつながるため,早期から行うべきとされています.

 代表的な治療法は,経鼻的持続陽圧呼吸法 nasal CPAP ( nasal continuous positive airway pressure ) です.これは,鼻マスクを介して睡眠中に気道に持続的に陽圧をかけ,上気道の閉塞を解除・予防する治療法です.現在,OSASに対して最も有効かつ安全な治療法と考えられており,中等度~重症例において標準的な治療法と位置付けられています.

 圧を設定したり,有効性を確認する必要があるため,CPAP導入は専門医が行う必要があります.

 他の治療法として 口腔内装具による下顎前方固定 外科治療 などがあります.

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