生活習慣病の食事法
生活習慣病の方の食事法
食事療法(ダイエット)としては,「栄養素をバランスよく摂って,総カロリーを下げる方法」が一般的でありますが,最近では『低炭水化物食(ローカーボ)』が提唱・紹介され話題を呼んでおります.摂取する脂肪の量を抑えることが良いとされてきたのに,エネルギーの供給を脂肪中心にするというわけですから驚いた方も多いのではないでしょうか.
糖尿病発生の元凶と考えられていた脂肪摂取でありますが,ランダム化比較試験により否定されております.また,高脂肪食自体はインスリンの感受性を悪化させないことも確かめられました.血糖に最も影響するのは炭水化物摂取であるため,ローカーボが注目され流行しているのも一理あると思われます.しかし,摂取する脂肪の種類が重要で,動物由来の脂肪・蛋白を摂りすぎると全死亡率,心血管疾患死亡率ともに上昇するとの報告があります.炭水化物をとらなければ何を食べても良いというのは危険なやり方です.夕食だけ炭水化物の摂取を控えるだけでもかなりの効果があるようです.
日本ではダイエットに関しては二者択一の様相を呈しておりますが,実際は多くの方法が存在しています.どれもそれなりに有効であり決定的なものは無いようです.しかし,そうした中にも,医学的な効果が証明され 権威ある医学誌でも提唱されているにも関わらず,日本ではあまり認知されていない食事法(地中海式食事法)があります.その方法によれば,2型糖尿病の発症リスクの低下、血糖コントロール・インスリン感受性の改善,心血管疾患発症リスクの軽減などの効果があげられることが,前向きコホート研究,ランダム化比較試験によって確かめられています.そこで この項では『地中海式食事法』をとりあげます。
【地中海式食事法】
① 野菜,低脂肪の乳製品(チーズやヨーグルト)、玄米・全粒粉,鶏肉,魚,ナッツ,植物油を摂るように心がける.
肉類は,牛肉,豚肉を少量にする.
魚介類は糖尿病のリスクと相関しない.
ナッツは高脂肪・高エネルギーであるが,摂取しても肥満は増加しないとの報告有り.
パンは白いパンではなく,茶色いパンにする。
全粒穀物を精製化(白米や白い小麦粉に)すると,その過程で栄養・繊維・微量元素などが失われる.繊維があることにより糖の吸収が穏やかになる.
油はバターやココナッツオイル,パーム核油の代わりに,不飽和脂肪酸の多いオリーブ油,カノーラ(西洋アブラナ)油,コーン油,ひまわり(sanflower)油,ベニバナ(safflower)油にする.
不飽和脂肪酸の中でも,トランス脂肪酸は LDL(悪玉)コレステロールを増やし,冠動脈疾患の原因となるので摂取を控える.
トランス脂肪酸を多く含むものは,マーガリン,バター,マヨネーズなど.これらの替わりに,オリーブオイルを摂ること習慣づける.
② 赤い肉,バター,ラード,菓子,砂糖入り飲料 は減らす.
加工肉(ハム,ソーセージ,ベーコン)摂取は,糖尿病のリスクに相関するとのこと.
③ 塩の代わりに,できるだけスパイス,柑橘類,酢 などを使用する.
食塩は 1日約6g以下に抑える.
(日本人の平均食塩摂取量は 11~12g であるとのこと.1日6g以下にするとかなり味気ない食事になるはず.)
④ 赤ワインを1日1~2杯飲むことが推奨されている.
適量のアルコール(男性22g, 女性24gまで)であれば,糖尿病の予防効果があるらしい.
⑤ 食物は 摂取する量・頻度によって階層化されている(地中海食ピラミッド).
『毎日摂取するもの』(ピラミッドの下層)
・野菜
・フルーツ
・オリーブオイル
・チーズやヨーグルトなど(できれば低脂肪のもの)
・ナッツ
『週に数回なら摂取OK』
・鶏肉
・卵
・魚介類
・豆類
『週に1~2回程度に抑えるもの』(ピラミッドの上層)
・赤身の肉(牛肉,豚肉,羊肉)
・加工肉(ソーセージ,ハム,ベーコンなど)
・菓子
・じゃがいも