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膀胱炎について

 膀胱炎について

 膀胱炎は,最も高頻度にみられる細菌感染症の1つです.腎盂腎炎とともに,単純性尿路感染(Urinary Tract infection: UTI)に分類されます.

 UTIは,腸や腟の病原菌が尿道周辺粘膜で集まり,上行して膀胱炎を起こします.

 海外の報告では、女性がUTIをおこす年間の頻度は約12%であり,ピーク年齢は 15~34歳,女性の5割は32歳までにUTIを経験するとのことです.特に若い女性の場合は、性交渉が一番の原因であると言われております.

 ウイルスや真菌も原因となりうるものの,起因微生物の大多数は細菌であり,そのほとんどが尿路病原性大腸菌(UPEC)です.UPECは,尿路上皮細胞内に侵入後,抗菌薬の作用しにくい静止状態となって潜伏可能なことが知られ,再発する原因の1つと考えられています.

 腎盂腎炎は膀胱炎に引き続いておきるものですが,その機序は解明されていません.膀胱炎を治療しなかったがために生じるものではないそうです.腎盂腎炎の頻度は、膀胱炎28例に1例くらいとのことです.

 膀胱炎の典型的な症状は,排尿時ないし排尿後の疼痛,頻尿,下腹部痛,残尿感,肉眼的血尿などです.38℃以上の発熱,悪寒,横腹痛,肋骨脊柱角の圧痛,嘔気・嘔吐などの症状が伴うようであれば,腎盂腎炎を疑います.

 感染症の診療の王道は,起因微生物の同定と薬剤感受性試験(細菌培養検査)であります.腎盂腎炎の場合は重篤化することもあり,また,抗菌薬の投与期間も長くなるため、尿細菌培養検査が必要になります.(そのため,当クリニックでは,腎盂腎炎が疑われる場合は一般病院の泌尿器科を紹介することにしております.)しかし,単純な膀胱炎であれば,尿検査や尿培養検査は行わなくてもよいと,ガイドラインで示されるようになりました。膀胱炎であるかどうか確信がつかない場合は,膿尿と細菌尿の存在を確認することが必要であり,試験紙法(テストテープ)で 白血球エステラーゼや亜硝酸塩反応を確認し,参考にするようにしております.

 治療薬(抗菌薬)は,日本のガイドラインではニューキノロン系の抗菌薬(クラビットなど)が第1選択薬とされています.この抗菌薬は,呼吸器,消化器,泌尿器の感染症を問わず,様々な種類の細菌に対し強力な威力を発揮します.しかし,薬剤耐性菌の増加が心配されており、安易な使用はさけるべきとの意見が広まっています.クラビットのような薬は,重篤な感染症に対する切り札として温存しておくものであって,ターゲット(起因菌)がわかっている軽症の膀胱炎に使用する必然性は無いとのことです.米国のガイドラインでは 単純性の膀胱炎にはST合剤(バクタ)を第1選択薬として使用することが推奨されております.尿路病原性大腸菌のバクタに対する耐性化率が30%(以下)の地域であれば,治癒率は85%以上に達するとの報告があります.

 膀胱炎の再発防止策として巷でよく言われているのは,性交渉後すぐ排尿する,排尿を我慢しない,水分を自由にとる,会陰を拭くときは前から後ろへ,きつい下着をつけない などでありますが,これらの効果はいずれも科学的に証明されておりません.実行しても害があるわけではないため,静観されているといった状況です.

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