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骨粗鬆症について

 骨粗鬆症について

 現在,日本には約1.300万人の骨粗鬆症患者が存在していると推定されております.

 骨粗鬆症の大半を占める原発性骨粗鬆症は,閉経と加齢が最大の原因であり,人口の高齢化に伴い 患者数は増加の一途をたどっています.

 骨粗鬆症の治療目的は,骨折のリスクを下げ,QOL(生活の質)の維持・改善を図ることにあります.海外での報告ではありますが,大腿骨頸部骨折で50%が歩行障害,25%が独立生活不能となり,骨折後3か月以内は 死亡率が5~8倍に増えるとのことです.

 【骨粗鬆症とは】

 骨粗鬆症とは,骨強度の低下(骨密度の低下および骨質の劣化)により,骨が脆くなる疾患です.主に閉経や加齢が原因となる原発性と,その他の要因(基礎疾患)による続発性に分類されます.

 骨は常に吸収と形成を繰り返して組織の亢進を行っております.骨吸収には破骨細胞が関与しており,エストロゲンというホルモンは破骨細胞の働きを抑制します.女性は閉経によりエストロゲンが急激に減少するため,破骨細胞の働きが活性化し,骨吸収が骨形成を上回ることにより 骨量が急速に減少していきます.

 【骨粗鬆症を疑う愁訴・症状】

 ① 脆弱性骨折(軽微な外力で生じた骨折)

 ② 身長の低下(2cm以上) 円背・亀背

 ③ 腰背部痛

 ④ 健診結果(骨密度低下の指摘)

 【日本における原発性骨粗鬆症の診断基準】

 Ⅰ 脆弱性骨折あり

   ① 椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり

   ② その他の脆弱性骨折あり  骨密度がYAM(※) の80%未満

  Ⅱ 脆弱性骨折なし

  骨密度が YAMの70%以下 または Tスコア(※) が -2.5 SD(標準偏差)以下

  ※ YAM: young adult mean  若年者の平均値に対して骨密度が減少している割合(%)

        若年者: 腰椎では20~44歳  大腿骨近位部では20~29歳

   Tスコア: 若年成人の骨密度平均値からどのくらい隔たっているかを標準偏差として表現したもの     

   Tスコア -2.5 SDと YAM 70%は ほぼ同じ

 【WHOの診断基準】

  DXA(脊椎または大腿骨)による骨密度(BMD:bone mineral density)のTスコアが -2.5 以下

  DXA: dual energy X-ray absorptiometry  体幹骨二重X線吸収法

 【初診時に必要な検査】

 ・ 胸腰椎単純X線検査

 ・ 骨密度測定  DXA(体幹骨二重X線吸収法)

 ・ 血液・尿検査 

   続発性骨粗鬆症・悪性腫瘍などと,原発性骨粗鬆症を鑑別するために必要

 ・ 骨代謝マーカー(特に骨吸収マーカー)

   骨折の危険度の予測,治療効果判定に有用

 【骨粗鬆症をおこしやすい危険因子】

 ● 環境因子・生活習慣(コントロール可能なもの)

  ・ カルシウム摂取不足

  ・ ビタミンD摂取不足

  ・ 運動不足

  ・ 喫煙

  ・ アルコール多飲  など

 ● 遺伝的因子・身体的因子(コントロール不可能なもの)

  ・ 加齢

  ・ 女性

  ・ 白人 アジア人

  ・ 骨折の既往

  ・ 大腿骨近位部骨折の家族歴

  ・ ステロイドなど 骨粗鬆症を起こす薬剤の服用  など

 【治療開始についての判断】

  ・ 骨粗鬆症による大腿骨骨折・椎骨骨折の既往がある

  ・ Tスコアが -2.5 SD 以下 (YAM 70%以下)

  ・ Tスコアが -1~-2.5 SD であれば,FRAX (WHO骨折リスク評価ツール)で評価し,10年後の大腿骨骨折 リスクが3%,主要な骨粗鬆症性骨折リスクが 15~20%を超える場合

 【治療】

  ● 食事療法

   食事によるカルシウム摂取は,骨粗鬆症の予防と治療において不可欠です.

   骨量を増やすためには,1日800mg以上のカルシウムが必要とされております.

   (許容上限摂取量は 1日 2.500mg)

      摂取したカルシウムが効率よく骨に蓄積されるためには,ビタミンD, K, C や マグネシウム,カリウムなどのミネラル類の補給が必要となります.

 

  カルシウムを多く含む食品(吸収率が高い順) 

   ① 牛乳・乳製品 ② 豆類 ③ 野菜類(緑黄色野菜) ④ 魚介・海藻類

 

  カルシウムの吸収を助ける栄養素

   ビタミンD: 1日 800~1.000 IU 摂取する 日光浴が必要

          キクラゲ・サケ・干しシイタケ など

   ビタミンK:    納豆 ブロッコリー

   マグネシウム: 海藻 ナッツ・豆類 

 

 ● 薬物療法

   ① 骨代謝調整薬  腸管からのカルシウム吸収を促進させる

     ・ 活性型ビタミンD3製剤

   ② 骨吸収抑制薬  破骨細胞に作用する

     ・ ビスホスホネート製剤

     ・ エストロゲン製剤

     ・ SERM

     ・ カルシトニン製剤  椎体のみに骨折予防効果があるが,わずか

                 疼痛緩和目的に用いられる

     ・ 抗RANKL抗体

   ③ 骨形成促進薬   骨芽細胞に作用

     ・ 活性型ビタミンD3製剤

     ・ ビタミンK2製剤

     ・ PTH (副甲状腺ホルモン)製剤

  ビスホスホネート製剤について

 骨粗鬆症の治療に主に使用される薬剤です.カルシウム製剤,ビタミンD製剤と併用することにより効果があげられます.骨粗鬆症でない方には適応がありません.

 開始後1年では効果がなく,2~3年目で効果が表れるようです.

 長期投与により非定型的大腿骨骨折(転子下骨折・骨幹部骨折)が生じる可能性があるとされております.そのため,投与後3~5年以上経って骨粗鬆症がひどくなければ(Tスコアが -2以上あり,骨折のリスクも少なければ),服用の中止を検討する必要があります.

 【管理・経過観察】

 治療開始1~2年後に DXA(体幹骨二重X線吸収法)によって 骨密度を評価することが望まれます.5年後にも再評価し,ビスホスホネート製剤を継続するか検討すべきとされています.

 ビスホスホネート製剤開始してから 3,6ヶ月後に,骨代謝マーカーを測定するのが良いようです.

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